2015/06/11 | Tweet |
塙選手のガレージからEVOLISTAへ
4月半ばから6月7日のランドクルーザーフェスin群馬までの約2ケ月の間で、ラリー参戦に必要なモディファイの大部分を塙選手のファクトリーで行い、次にFJクルーザーが運び込まれたのは群馬県沼田市にあるEVOLiSTA(エボリスタ)だ。ここは今回TEAM JAOSのメカニックを担う小林氏のファクトリーで、ランサーエボリューションのユーザーの中では名の知れたカーショップだ。小林氏は過去にWRCラリージャパンのメカニックやチーム監督を経験し、現在はプジョー208GTiで全日本ラリー等にチャレンジするTEAM CERAM(チーム セラム)のチーフメカニックを担当するスペシャリストなのだ。余談ではあるが、JAOSもTEAM CERAMのマシンであるプジョー208GTiのアンダーガード製作等でサポートを行っている。
ノーマルエンジンのパワーを効率よく使う秘策
AXCR2015仕様のFJクルーザーのモディファイメニューにエンジンのチューニング等のパワーアップは一切入っていないのは以前もお知らせした通り。しかし、いくらノーマルエンジンでも問題ないとはいえ、快適な走行を望むのならばエンジンのパワーを効率良く使うことが望ましい。そこで浮上したのがファイナルギアのダウン化なのだ。
AXCRで必要なのは低~中高速までの速度域。減速比が下がったことで、最高速度が落ちるわけだがAXCRの場合180㎞/hで巡航するようなシーンは少なく、大半は100km/h以下のはずである。ファイナルギアをダウン化することでAXCRで必要な速度域に合わせてエンジンのパワーを効率よく使おうという作戦なのだ。そこでEVOLiSTAにFJクルーザーを持ち込み、ファイナルギヤのダウン化と前後にOS技研製のLSD「スーパーロック4」を組み込むことにした。
ベース車両の2013年式FJクルーザー(日本正規モデル)は5速ATを搭載し、減速比は3.727となる。そこで着目したのが共通する部分が多いランドクルーザープラド150と215ハイラックスサーフだ。諸元表を見てみるとFJクルーザーと同じV6・4Lエンジンモデル(現在はディーゼルモデル登場によりラインアップされていない)の減速比はFJクルーザー同様3.727。ところが直4・2.7Lエンジンモデルの諸元表を見てみると減速比は4.555であることが発覚。ということは・・・ FJクルーザーの減速比を3.727から4.555にすることができれば、約22.2%のギヤダウンになるはず。つまり同じ速度ならばエンジンの回転数がノーマルよりも22.2%多くなるということだ。
「ならばプラドもしくはサーフ用のファイナルギヤ(リング&ピニオンギヤ)を組み込めばいいのではないか・・・」という構想から駆動系のチューニングがスタートした。
ファイナルギヤのダウン化と前後LSDの両立
「もしこれが成功すれば、事実上パワーアップするのと同じことになり、各段にポテンシャルがアップする!」と期待に胸を膨らませてスタートしたギヤダウン&LSD化だが、実際に部品を手配し始めると一筋縄にいかないことが分かってきた。まず、ファイナルギヤはプラド150のモノを流用することは決定したが、それに合うLSDがない・・・ そこでOS技研様に相談したところ興味深い回答が返ってきた。海外のFJクルーザーにはMTモデルが存在し、その減速比は4.555であること。さらに同社では海外向けにこのFJクルーザーMT車用のLSDをラインアップ(日本では未発売)しているというではないか。「これならば装着できるのではないか?」という予測のもと、EVOLiSTA・小林氏の手によって作業を開始した。
まず、リヤはスムーズにファイナルギヤとLSDが純正のデフケースにピタリと納まり、バックラッシュやクリアランスの問題もなく、無事に組み込みが完了した。しかし、問題はフロントで起きた。どうやらFJクルーザーとプラド150のデフケースのサイズが微妙に異なるようで、正常に組み込むことができない。そこで様々な厚みのシムを用意し、組んでは測る・・・という気の遠くなるような作業を繰り返し少しづつ調整していくことになった。ついにシムを小林氏が自ら削って調整するということもチャレンジしてみたが、どうしてもうまくいかない・・・
途方に暮れていたところ、塙選手からEVOLiSTAに荷物が届いた。正体はバックアップで入手しておいた中古の215サーフのフロントデフだ。これにファイナルギヤとLSDを組んでみたら見事にマッチングした。
文字で表現すると簡単な事のようにも感じるかもしれないが、ここにたどり着くまでには相当な苦労と周りのサポートがあったからこそ。特にチームクルーの一員であるパドック・能戸知徳氏が情報を調べて解決策を導き出してくれた。一般ユーザーには決しておススメできないカスタマイズだがTEAM JAOSのFJクルーザーにこんなモディファイが行われているということを知ってもらえたのではないだろうか。
残すは外装の仕上げとシェイクダウン
無事に駆動系のモディファイが完了したので、次は外装にとりかかる。今回はデモカー然としたスタイルを継承し、シンプルにするという案も浮上したが、フィルムメーカー&ラッピング業者様の協力を得てフルラッピング+αを施してデモカーの時とはまったく違うスタイルにすることにした。また、本格的なシェイクダウンは6月21日に宮城県のスポーツランドSUGO・モトクロスコースで開催される宮城トヨタ様主催の「四駆祭り」にて行う予定だ。