2015/04/08 | Tweet |
デモカーからラリーマシンへ
TEAM JAOSが今回のアジア クロスカントリーラリー2015(以下AXCR 2015)で使用するマシンは前回レポートしたようにデモカーとして活躍中のトヨタ・FJクルーザー(2013年式)だ。JAOSの市販パーツでキッチリカスタマイズされているが、シティユースでの快適性をなるべくスポイルせずに、クロカン性能をプラスした一般的なスペック。通常のオンロード走行やライトクロカンならば快適性と走破性を両立させたバランスの良い性能だが、悪路を長距離走るラリーレイドには各部の改良が必要となる。
AXCR2015の場合、6日間の総走行距離は約2,500㎞、SSだけでも約1,060㎞。日本での通常使用では滅多に出くわすことがないような激しいセクションも日常茶飯事だ。そこをハイスピードで走るのだから、安全なレース、そして完走を目指すためにもガード類の追加や安全装置の強化を重点的に行いたいところである。
天候によっては河のようになった水たまりを渡ったり、ドロドロになったモーグルのような場所もあるし、これを何日間も繰り返さなければならない。つまりマシンのトラブルやスタック等をなるべく回避することが、無事にゴールするために必要不可欠なのだ。また、AXCRは2001年からFIA 公認ラリーとして開催されているため、規定に応じた安全装備が必要。具体的にはシートベルトや消火器などの装備はもちろん、規定に基づいた構造のロールケージなど多岐にわたる。その他にもスペアタイヤや工具、ウインチやジャッキ類なども積んで走るため、これらのアイテムを使いやすく、かつ走行中暴れないように固定して装備する必要もあるのだ。1度ラリー車として仕上げているクルマではなく、乗用車(JAOSデモカー)をラリーマシンにするためには、細かな部分を含めると結構大変だということがお分かりいただけただろうか。
塙選手のファクトリーに入庫するための下準備
JAOS FJクルーザー AXCR2015仕様のプランニング及び設計・製作作業のほとんどはドライバーである塙選手に手掛けていただくことになっている。塙選手の造り上げるマシンは抜群の走破性と無駄のない造り、そして圧倒的に耐久性に優れていることで有名だ。このFJクルーザーも数々の名車を生み出した塙選手のファクトリーで作業をする予定だが、入庫する前にJAOSで下準備を行ったので、改造前の状態を紹介しておこう。
今回のマシン製作の一番の難所がロールケージ。規定をクリアした構造であることはもちろん、万が一の際に乗員の命を守ってくれるもっとも重要なパーツだ。これは内装パーツをすべて外してワンオフで製作して装着する。また、ラリー中は2名乗車(ドライバーとコ・ドライバー)でリヤにはスペアタイヤや工具、レスキューグッズを積載するため、リヤシートを取り外した。実際にはフロントシート2脚もバケットシートに交換するが、シートが無いと積載車にも載せられないため作業直前に外す予定だ。
次は電装パーツの取り外し。ラリーの開催地はタイ王国ではもちろん日本のナビゲーションシステムやETCは役立たず。それどころかラリー中はコマ図とトリップメーター、そしてコ・ドライバーの感(!?)だけが頼りなのだ。
外装パーツは絶対に不要と思われるサイドステップのみを取り外し、その他はそのままの状態で搬入することにした。今回のマシン製作テーマの一つが“JAOSデモカーのカタチをなるべく残し、市販パーツを活かすこと”。したがってJAOS FJクルーザーのキャラクターを際立たせている「JAOS フロントスポーツカウル」はもちろん、多少の加工や補強を加えたとしても1つでも多くの市販パーツを残したまま造り上げるのが理想だ。実際には背面タイヤやリヤバンパーも外すことになると思われるが、このまま持ち込んで検討することにして、入庫準備は完了した。
これから搬入を行い、現車を見ながら塙選手と各部の仕様について打ち合わせをし、いよいよ製作作業に入る。その模様は次回から段階を追ってレポート予定だ。